こんにちは、
MET LABゼミの小野です!
先日のブログに引き続き、夏の特プロとして実施したディスカッションについてご説明します。
・・・前編を先にご覧ください!
▼①観測編
https://met-lab.sfc.keio.ac.jp/872
▼②解析編
https://met-lab.sfc.keio.ac.jp/?p=934
Pythonの解析実習の後、4・5人のグループに分けディスカッション・発表を行いました。
2020年9月に発生し日本に接近した、令和2年台風第10号(Haishen)は“最強クラス”とも言われ、最大限の警戒が呼びかけられました。しかしながら、台風10号は接近直前に急激に勢力を落とし、昨年の台風15・ 19号ほどの規模の被害にはなりませんでした。
気象庁は、予報よりも早く勢力が弱まり、西日本を中心とした雨量も少なく、高潮となった地点が少なかった要因が以下である、と発表しました。
- 台風の発達が抑えられたのは、東シナ海から台風に乾燥空気が流入したことが影響したと考えられます。また、海面水温の低下に伴う予報への影響については限定的であった。
- 西日本での雨量が少なかったのは、台風が速い速度で九州西海上を北上したため強い雨が長時間続かなかったことに加え、数値予報モデルを統計的に補正する手法(ガイダンス)が過大な予想をしたためであった。
- 高潮が発生した地点が少なかったのは、潮位偏差(潮位から天文潮位を差し引いた値)のピーク時刻が満潮時刻とずれたこと等が要因であった。
一方、海水温度の低下などメカニズム要因の他にも被害を抑えられた要因が要因があるのではないでしょうか。私たちは以下をテーマとし、検証しました。
▶︎テーマ;
台風10号による被害が、想定よりも大幅に少なかった理由。
〜台風自体弱まった点以外に注目して〜
挙げられた事例をいくつか紹介します。
- 早期のメディア報道がされたこと。
→ニュースで風速60m/sによる被害の大きさを、映像で伝えていた。 - 市民の危機・防災意識が高まっていたこと。
→新型コロナウイルスによる感染症を含め、非常事態への意識の高まっていた。 - インフラや自治体の対応が、事前に呼びかけられていたこと。
→ハザードマップを確認するような呼びかけ、GoToキャンペーンを利用したホテル避難をする人も。(避難場所がいわゆる「避難所」だけじゃない良さ?) - 台風の規模が予報精度を上回ったこと。
→過去のデータがなく、計算値を補正する確実な手法がなかった? - 昨年の台風を踏まえ、新たな対策が練られていたこと。
→エネルギー強靭化法により電力の早期復旧が可能に。
このようにグループワークでは1時間と限られた時間ながら、それぞれ質の高い議論・発表を実施できました。
以上、3回にわたって今年度の夏の特プロについてご報告させていただきました。全回オンラインでの実施となりましたが、新たな特プロのスタイルとして確立することもできました。
このブログを通して、少しでも気象学研究会の活動内容や雰囲気が伝われば、幸いです。
今後とも気象学研究会の活動に、ご注目ください!
参考;
・気象庁 報道発表「令和2年台風第10号における予報の検証(速報)」
https://www.jma.go.jp/jma/press/2009/16a/20200916_kensyou.html